一般社団法人 日本消化器がん検診学会

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対策型大腸がん検診における免疫便潜血検査陽性者に対する精密検査の基本的考え方

 日本消化器がん検診学会は、対策型大腸がん検診における免疫便潜血検査(FIT)陽性者に対する精密検査について、以下の基本的考え方を示す。

 FITは、対策型大腸がん検診の基盤となる有効かつ非侵襲的な検査法である。しかし、その有効性は、陽性となった受診者が適切な精密検査を確実に受けて初めて十分に発揮される。FIT陽性者への対応は、単なる「陽性後の追加検査」ではなく、大腸がん検診プログラム全体の実効性を左右する重要な要素である。

 令和8年10月7日付の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(以下、指針とする)」の改訂により、大腸がん検診における免疫便潜血検査陽性者に対する精密検査は、関連学会が作成するマニュアルに準拠して行われることとなった。本学会では、指針の変更に合わせたマニュアルの改訂を予定しているが、発刊までの移行期の混乱を避けるため、現時点での精密検査に関する見解を公表するものである。

 本学会は、FIT陽性者に対する精密検査の第一選択を全大腸内視鏡検査(TCS)と位置づける。TCSは、大腸全体を直接観察することが可能であり、進行癌、早期癌、腺腫を含む病変の検出に優れ、必要に応じて生検やその後の治療方針の決定にもつながる、最も標準的かつ完結性の高い精密検査法である。

 一方で、受診者の全身状態、併存疾患、内視鏡挿入困難、本人の強い拒否、地域における医療資源の制約などにより、TCSの実施が困難または不適当な場合もある。このような場合には、大腸CT検査およびS状結腸鏡検査と注腸X線検査の併用は、いずれも代替的選択肢となり得る。これらの検査法は、一定の条件下では有用であるが、いずれも生検や治療を同時に行うことはできず、所見陽性時には最終的に内視鏡による確認や治療が必要となる。そのため、これらの検査はTCSと同列の第一選択ではなく、代替的選択肢として位置づけられるべきである。

 本学会は、対策型大腸がん検診におけるFIT陽性者に対する精密検査について、以下の基本的方向性を示す。

  1. 精密検査の第一選択は全大腸内視鏡検査とする。
  2. 全大腸内視鏡検査の実施が困難または不適当な場合には、「大腸CT検査」および「S状結腸鏡検査と注腸X線検査の併用」を、いずれも代替的選択肢として考慮する。
  3. 「大腸CT検査」および「S状結腸鏡検査と注腸X線検査の併用」は、いずれも全大腸内視鏡検査に代わる代替的検査法として位置づけられ、標準的な精密検査として優先的に選択されるものではない。
  4. 精密検査の質の担保と精検受診率の向上は、対策型大腸がん検診の実効性を高めるうえで極めて重要である。

 さらに、本学会が強調したいのは、FIT陽性者に対する精密検査のあり方は、単にどの検査法を用いるかという問題にとどまらないという点である。対策型大腸がん検診における精密検査は、適切な受診勧奨、受診者への十分な説明、精密検査実施機関の質、偶発症への対応体制、病変発見後の治療連携、さらには精密検査結果の把握と検診実施主体への返却までを含めた一連の体制として設計されなければならない。真に重要なのは、FIT陽性者が確実に適切な精密検査を受け、その結果が診療および検診事業の評価に結びつく仕組みを構築することである。

 本学会は、今後も、FIT陽性者に対する精密検査実施機関に求められる要件、精密検査の質指標、自治体との連携のあり方、精密検査結果の把握体制の整備等について検討を進め、対策型大腸がん検診の実効性向上と大腸がん死亡率減少に資する取り組みを推進していく。

2026年10月13日
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
理事長 松田 尚久

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