一般社団法人 日本消化器がん検診学会

一般の皆様

血液による胃がんリスク評価(いわゆる「ABC分類」)を受けられた方へのご注意

一般社団法人日本消化器がん検診学会

 胃がんの主たる原因はヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)の感染であり,ピロリ菌感染が長く続くことで,慢性の萎縮性胃炎が生じ,胃の粘膜が胃がんにかかりやすい状態になることが知られています。血液検査などで胃がんにかかるリスクを予測して分類することが胃がんリスク評価です。血液によるリスク評価の代表的なものとして、血清抗体価でピロリ菌の感染状態を判断し、胃粘膜の萎縮の程度をペプシノゲン法で判断し、その組み合わせで胃がんリスクをグループ分類する胃がんリスク評価(いわゆる「ABC分類」)があります。
 

胃がんリスク評価では胃がんにかかっているかどうかの診断はできません。胃がんになりやすい状態かどうかを判定します。

 胃がんリスク評価では、胃がんになるリスクが高いか低いかを評価し、換言すれば、胃の健康度評価を行うことはできますが、胃がんを診断するものではありません。胃がんの診断には、画像診断である胃内視鏡検査(胃カメラ)か胃X線検査(バリウム検査)が必要です。したがって、胃がんリスクがある(B・C・D群)と判定された人は胃がんにかかりやすい状態にあるので、定期的に胃がん検診を受けましょう。血液検査だけで終わらずに、画像診断を受けて下さい。
 

胃がんリスク評価のA群(健康な胃)の判定の中には,胃がんも胃炎も紛れ込んでいます。一度は胃がん検診を受けられることをお勧めします。

 ABC分類では、ピロリ菌抗体とペプシノゲン法とも陰性の場合をA群といい、一般的にはピロリ菌感染のない健康的な胃と判定されていることが多いのですが、実際のA群の中には、以前にピロリ菌に感染していた人や、あるいは、現在もピロリ菌感染が継続している人が一部含まれてしまいます。実際に、胃がんの患者さんの胃がんリスク評価の結果では、胃がんの10%前後がA群に分類されたという報告があります。
したがいまして、A群に分類された人も、血液検査による胃がんリスク検査だけでなく、一度は胃内視鏡検査か胃X線検査などの画像検査(胃がん検診)を受けることを推奨します。胃がんが発生していないかどうかを診断してもらうと同時に、血液検査で誤ってピロリ菌に感染していない健康な胃と判定されていないかどうか確認してもらうことが大切です。
 

ピロリ除菌後の方も定期的に胃がん検診をお勧めします。

 ピロリ菌除菌治療を受けた人は、胃がんのリスクが低下しますが、胃がんにならないわけではありません。したがって、かかりつけ医で定期的に胃内視鏡検査を受けるか、定期的に胃がん検診を受けてください。

一般の皆様